交通事故で鎖骨骨折してしまった場合、これからどうなるのか、慰謝料はどれくらいもらえるのか、当然不安はつきないことと思います。
鎖骨骨折した場合、ほとんどが、後遺症が残ることなく完治することができます。
もっとも、肩が動かしづらくなったり、骨の癒合がうまくいかず変形したり、鎖骨周辺の神経を傷つけて痛みやしびれが生じてしまうこともあります。
このような後遺症が残った場合には、後遺症について後遺障害認定を受けることができれば、後遺症についても慰謝料や治療費を受け取ることができます。
この記事では、
- 鎖骨骨折とは
- 後遺障害とは
- 鎖骨骨折を原因とした後遺症が後遺障害認定される場合
- 交通事故により鎖骨骨折した場合の賠償金請求に弁護士に依頼した方がいい理由
について、弁護士が詳しく説明します。
鎖骨骨折とは
鎖骨骨折は、転倒して肩や腕を強打した衝撃で生じることがあります。
そのため、柔道やラグビー、アメフトなど激しいスポーツで生じることも少なくなく、小さい子供でも遊んでいてなってしまうこともあります。
鎖骨は、交通事故でも、よく骨折しやすい部位といえるでしょう。
バイクや自転車での事故で、転倒した際に肩を下にして、強く打って、骨折してしまうこともあります。
交通事故のように強い力が加わって鎖骨が骨折した場合、鎖骨周辺の神経を圧迫して、痛みやしびれを生じさせることもあります。
鎖骨骨折の多くが、鎖骨の中央3分の1部分で発生します。鎖骨を骨折すると、身体の中央寄りの近位骨片が上方にずれ、肩よりの遠位骨片が下方にすれ、鎖骨の正常の形から変形してしまうことがあります。
さらに、両骨片が重なり合って短縮すると、肩幅が狭まって、骨折部分にはれや痛みがしょうじることがあります。
(1)鎖骨骨折の症状
鎖骨骨折が生じると、骨折部分が腫れて強い痛みが生じます。肩や腕を動かすと痛みが強まり、肩が上げられないということも少なくありません。
鎖骨は外から皮膚の上から形状を見たり、触れたりすることができる骨です。鎖骨が骨折したことにより位置がずれてしまった場合には、その部分の皮膚が突出して見えてしまうこともあります。
さらに、鎖骨周辺の神経を圧迫して、痛みやしびれを生じさせることもあります。
(2)鎖骨骨折の検査・診断
鎖骨骨折は、レントゲンで検査・診断することができます。
鎖骨骨折のレントゲン撮影は、一方向ではわかりにくいこともあるため、複数の異なった方向から撮影することもあります。
場合によっては、CTやMRIなどで詳しく検査することもあります。
(3)鎖骨骨折の治療
鎖骨骨折はズレが大きい場合などには手術が必要なこともあります。しかし、小さい子供である場合や比較的軽度な場合には、骨のズレを正常な位置に戻してから、専用の鎖骨バンドなどで固定して安静にして治療を行うことになります。
ズレが大きく手術が必要な場合などには、金属製のワイヤーや専用のプレートなどを使用して、骨折部分を結合させる手術を行うことになります。
鎖骨骨折により後遺症が残った場合には後遺障害の認定を
後遺症が残った場合に、後遺症について慰謝料や賠償金を受け取るためには、通常、後遺症が「後遺障害」であると認定を受けることが必要となります。
後遺障害であると認定されると、後遺障害等級が割り振られ、それによって、後遺障害の慰謝料や賠償金の算定の目安になります。
後遺障害の内容に応じて、重いものから順に1~14級が認定されます。
鎖骨骨折によって後遺障害が認定される場合とは
(1)鎖骨骨折による運動障害と後遺障害等級
鎖骨骨折により肩の可動域が制限されてしまう場合があります。
鎖骨骨折により肩の可動域が制限された場合に認定される可能性がある後遺障害等級は次のとおりです。
後遺障害等級 | 後遺障害の内容 |
---|---|
10級10号 | 1上肢の3大関節(肩関節、ひじ関節、手関節)中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
⇒「関節の機能に著しい障害を残すもの」とは次のような場合をいいます。 ・関節の可動域が腱側の可動域角度の2分の1以下に制限されているもの ・人工関節・人工骨頭をそう入置換した関節のうち、その可動域が腱側の可動域角度の2分の1以下に制限されていないもの | |
12級6号 | 1上肢の3大関節(肩関節、ひじ関節、手関節)中の1関節の機能に障害を残すもの |
⇒「関節の機能に障害を残すもの」とは次のような場合をいいます。 ・関節の可動域が腱側の可動域角度の4分の3以下に制限されているもの |
(2)鎖骨骨折による変形障害と後遺障害等級
鎖骨骨折で、骨折箇所の癒合不全などによって、骨に変形が生じてしまう場合があります。鎖骨骨折による変形障害に認定される可能性がある後遺障害等級は次のとおりです。
後遺障害等級 | 後遺障害の内容 |
---|---|
12級5号 | 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨または骨盤骨に著しい変形を残すもの |
⇒「著しい変形を残すもの」とは次のような場合をいいます。 ・裸になった時に変形していることが明らかなこと(レントゲンから見て変形しているのでは足りません。) |
(3)鎖骨骨折による神経系統の障害と後遺障害等級
鎖骨骨折により神経が圧迫されるなどして、痛みやしびれが生じてしまう場合があります。
鎖骨骨折による神経系統の障害に認定される可能性がある後遺障害等級は次のとおりです。
後遺障害等級 | 後遺障害の内容 |
---|---|
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
⇒「頑固な神経症状を残すもの」とは次のような場合をいいます。 ・レントゲンなどで客観的に痛みやしびれの原因が分かり、医学的に証明することができること | |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
⇒「神経症状を残すもの」とは次のような場合をいいます。 ・レントゲンなどで客観的に神経症状の原因が分からないまでも、事故の態様や、治療過程、症状の一貫性などから、交通事故で痛みやしびれが生じていることが医学的に説明できること |
鎖骨骨折について後遺障害が認定された場合の後遺症慰謝料の相場
後遺症が残った場合、後遺症が残ったことにより受けた精神的ショックを償うために「後遺症慰謝料」が支払われることになります。
後遺症慰謝料の金額は次のように定められています。
等級(別表第二) | 自賠責の基準 | 弁護士の基準 |
---|---|---|
10級 | 190万円(187万円) | 550万円 |
12級 | 94万円(93万円) | 290万円 |
14級 | 32万円(32万円) | 110万円 |
※自賠責の基準は、2020年4月1日に改定されており、2020年4月1日以降に発生した事故に適用されます。かっこ書き内の金額は、2020年3月31日までに発生した事故に適用されます。
自賠責の基準と弁護士の基準とは、慰謝料の算定基準のことをいいます。
慰謝料の算定基準については、次の項目で説明します。
3つの算定基準
慰謝料には、次にあげる3つの算定基準があります。
- 自賠責の基準
- 任意保険の基準
- 弁護士の基準(裁判所の基準)
慰謝料の3つの算定基準について説明します。
(1-1)自賠責の基準
自賠責の基準は、自動車損害賠償法(自賠法)によって定められている損害賠償金の支払い基準です。
自賠責保険は、自動車やバイクを保有する人が加入を義務付けられている保険で、「強制保険」とも呼ばれます。
事故の加害者が任意保険に加入していなくても、通常は自賠責保険からの損害賠償金を受け取ることになります。
もっとも、自賠責保険は被害者への最低限の補償を目的として設けられたものであるため、3つの算定基準の中では最も金額が低くなります。
(1-2)任意保険の基準
任意保険基準は、各保険会社が独自に定める慰謝料算定基準です。
一般に公開はされていませんが、金額は自賠責基準よりも高く、弁護士基準よりも低い程度です。
事故後、被害者が加害者側の保険会社と賠償金について示談交渉する際は、保険会社は通常この任意保険基準を用いて金額を提示してくることになります。
(1-3)弁護士の基準(裁判所の基準)
弁護士基準は、過去の交通事故裁判における支払い判決に基づく基準です。「裁判所基準」と呼ばれることもあります。
弁護士会が編纂している『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』(通称「赤い本」)や『交通事故損害額算定基準』(通称「青本」)に記載されている計算方法や金額を用います。
3つの算定基準を金額の大きい順に並べると、
弁護士の基準(裁判所の基準)>任意保険の基準>自賠責保険の基準
となることが一般的です。
弁護士に示談交渉を依頼すると、弁護士の基準を用いて示談交渉をスタートすることになります。そのため、自賠責の基準や任意保険の基準に基づいて算定された金額よりも増額できる可能性が出てきます。
交通事故による鎖骨骨折について、後遺症慰謝料以外に請求できる可能性がある賠償金
交通事故による鎖骨骨折について、後遺症慰謝料、逸失利益以外に請求できる可能性がある賠償金は次のとおりになります。
- 賠償金
賠償金の項目 | 内容 |
---|---|
入通院慰謝料(傷害慰謝料) | 傷害を受けたことにより生じた精神的ショックを償う慰謝料 |
治療関係費 | 手術、治療、入院、薬などにかかった費用 |
付添看護費 | 入院に家族の看護や付添を必要としたことに対する費用 |
通院交通費 | 病院へ通院するために必要となった交通費 |
休業損害 | 仕事を休んだことで発生した損害の賠償 |
逸失利益 | 将来得られるはずだった利益(収入など)に対する賠償 |
交通事故による鎖骨骨折についての賠償金請求を弁護士に依頼した方がいい理由
適正な賠償金を得るためには、交渉を弁護士に依頼し、「弁護士の基準」によって賠償額を算定すべきですが、それ以外にも弁護士に交渉を依頼することのメリットが4つあります。
- 適正な後遺障害等級の認定を受けられる可能性が高めることができる
- 不利な過失割合が割り当てられるリスクを回避する
- 不利な条件で加害者と和解するリスクを回避する
- 弁護士費用特約に加入していれば、弁護士費用の心配がないことも
1のメリットについては、後遺症がある場合にしかあてはまりませんが、2、3、4については、後遺症がない場合にでもあてはまりますので、後遺症がない場合であっても、弁護士に相談・依頼することをおすすめします。
(1)適正な後遺障害等級の認定を受けられる可能性が高めることができる
適正な後遺障害等級の認定を受けるためには、どのような資料を提出するのか、資料にどのような記載をするかが重要です。
もっとも、後遺障害等級認定の申請を何度も行う人はそういません。後遺障害等級認定の申請におさえておくポイントやコツを知っている人はそうそういないのです。
しかし、交通事故問題に精通した弁護士は、後遺障害等級認定の申請のポイントやコツを知っています。弁護士が医師の作成した診断書や資料の記載内容をチェックすることもあります。
弁護士に依頼することで、適正な後遺障害等級の認定を受けられる可能性が高めることができます。
(2)不利な過失割合が割り当てられるリスクを回避する
弁護士に依頼するメリットとしては、加害者からの話を鵜呑みにして、不当な過失割合が認定されてしまうことを回避することができるということが挙げられます。
交通事故において加害者・被害者双方に不注意があった場合、どちらの不注意が交通事故の原因となったかを割合(「過失割合」)を定めて、賠償金額を減額することがあります。
例えば、過失割合が被害者:加害者=3:7であるとすると、被害者の過失の分3割が全体の賠償金額より減額されることになります。
通常は、加害者被害者双方から話を聞いて、事故状況を明らかにし、過失割合を認定するのですが、被害者が交通事故でケガを受けたショックで、被害者が事故状況を説明することができないこともあります。
そのため、加害者側の話のみで過失割合が認定されてしまう可能性があるのです。
そこで、弁護士に交渉を依頼することで、弁護士が専門的な知識やノウハウを駆使し、
加害者側の主張が一方的に鵜呑みにされ、不当な過失割合が認定されないように防ぐことができます。
(3)不利な条件で加害者と和解するリスクを回避する
次に、弁護士に依頼するメリットとしては、本来であればもっと高額な慰謝料や賠償金が受け取れるはずであるにもかかわらず、加害者側の保険会社が提示する示談額が不利なものだとも知らずに、示談に応じてしまうことを防ぐことができます。
被害者が交通事故によりケガをした場合、被害者の家族は、精神的・肉体的にも過大な負担を負うことがあります。
そして、加害者側の保険会社との慰謝料や賠償金の交渉まで手が回らなくなってしまって、保険会社が言うなら間違いないだろうなどと思い込み、提示された示談額で示談に応じてしまうことは少なくありません。
しかし、これまで説明したとおり、自賠責保険会社・任意保険会社の基準と弁護士の基準では賠償金額に大きな違いがあります。
また、賠償金を支払うのは加害者側となりますので、少しでも支払う金額を減額しようとあれやこれやと不利な条件を付ける場合も少なくないのです。
そのため、少しでも高額な慰謝料や賠償金を受け取るためには、交通事故に詳しい弁護士に交渉を任せてしまうのがよいといえるでしょう。
(4)弁護士費用特約に加入していれば、弁護士費用の心配ないことも
弁護士に依頼すると弁護士費用がかかってしまいます。
しかし、弁護士費用特約を利用すれば、費用を気にする心配はありません。
そもそも「弁護士費用特約」とは、あなたやあなたの家族が入っている自動車保険や火災保険のオプションとして設けられている制度です。自動車事故の賠償請求を行う際に発生する弁護士費用を保険会社が支払ってくれるのです(一定の限度額、利用条件あり)。
また、弁護士費用特約を使用しても保険料を値上がりする心配や保険の等級が下がるということはありませんので安心してください。
【まとめ】鎖骨骨折により肩が動かしづらい、痛みやしびれが生じるなどの後遺症が残る可能性があり、この場合後遺障害として後遺症慰謝料がもらえる可能性も
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 鎖骨は、バイクや自転車での事故で、転倒した際に肩を下にして、強く打って、骨折してしまうこともある。
- 後遺症が残った場合に、後遺症について慰謝料や賠償金を受け取るためには、通常、後遺症が「後遺障害」であると認定を受けることが必要。
- 鎖骨骨折による運動障害と後遺障害等級
後遺障害等級 | 後遺障害の内容 |
---|---|
10級10号 | 1上肢の3大関節(肩関節、ひじ関節、手関節)中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
12級6号 | 1上肢の3大関節(肩関節、ひじ関節、手関節)中の1関節の機能に障害を残すもの |
- 鎖骨骨折による変形障害と後遺障害等級
後遺障害等級 | 後遺障害の内容 |
---|---|
12級5号 | 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨または骨盤骨に著しい変形を残すもの |
- 鎖骨骨折による神経系統の障害と後遺障害等級
後遺障害等級 | 後遺障害の内容 |
---|---|
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
- 鎖骨骨折について後遺障害が認定された場合の後遺症慰謝料の相場
等級(別表第二) | 自賠責の基準 | 弁護士の基準 |
---|---|---|
10級 | 190万円(187万円) | 550万円 |
12級 | 94万円(93万円) | 290万円 |
14級 | 32万円(32万円) | 110万円 |
- 後遺症慰謝料以外に請求できる可能性がある賠償金
賠償金の項目 | 内容 |
---|---|
入通院慰謝料(傷害慰謝料) | 傷害を受けたことにより生じた精神的ショックを償う慰謝料 |
治療関係費 | 手術、治療、入院、薬などにかかった費用 |
付添看護費 | 入院に家族の看護や付添を必要としたことに対する費用 |
通院交通費 | 病院へ通院するために必要となった交通費 |
休業損害 | 仕事を休んだことで発生した損害の賠償 |
逸失利益 | 将来得られるはずだった利益(収入など)に対する賠償 |
- 交通事故による鎖骨骨折についての賠償金請求を弁護士に依頼した方がいい理由
- 適正な後遺障害等級の認定を受けられる可能性が高めることができる
- 不利な過失割合が割り当てられるリスクを回避する
- 不利な条件で加害者と和解するリスクを回避する
- 弁護士費用特約に加入していれば、弁護士費用の心配がないことも
ご加入中の自動車保険や損害保険に「弁護士費用特約」が付いている場合、原則的に弁護士費用は保険会社が負担することになります(一定の限度額、利用条件あり)。
交通事故の被害にあって賠償金請求のことでお悩みの場合は、アディーレ法律事務所にご相談ください。
弁護士は敷居が高く,相談するのは気後れすると感じられている方も多いのではないでしょうか。私もそのようなイメージを抱いていました。しかし,そのようなことはありません。弁護士は皆,困った方々の手助けをしたいと考えております。弁護士に相談することが紛争解決のための第一歩です。ぜひ気軽に弁護士に相談してみてください。私も弁護士として皆さまのお悩みの解決のために全力を尽くします。